Memory.1 【別れの挨拶、笑顔の旅立ち】

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もし見られていたら計画が丸潰れじゃないか。 「そう言えばイリス様、アレス様には報告するんですか?」 いきなり話題を振ってきたチビに少し戸惑いながらも、吸血鬼はそんな私を見て話題に割り込んできた。 「アレスさんって誰?」 「御主人様です!イリス様とは長い付き合いをさせていただいているんです」 「イリスにもしっかり友達いたんだね」 まるでそこら辺のカップルかのようにだるそうにしながらも優しい目を向けて私の頭をまた撫でて来た。 「いますよ」 少し鬱陶しそうに撫でてきている手を退けた。 そんなに頭を撫でられるのは好きじゃないのに、彼に撫でられるのは不思議と心地良くてなぜか落ち着く。 でも、そんなことも言ってられる状況ではないのは分かっているから。 もしかしたら分かって私の頭を頻繁に撫でてくるのだろうか。とんだ嫌がらせだな。 「アレスには、言うよ一応。なんて言われるか分からないけれど」 村で待っている彼女にこれを言っていいのか、私は村に着く手前までそれを考え込んでいた。 私が休みを求めてまた一人にさせて、また旅立って一人にさせるのか。 彼女ももうれっきとした一人の神様で、有名なオリュンポス神なのに。 一人にしたって全然平気な筈なのに過保護の母親のような気分に不思議に自然となる。 それはきっと、彼女が煙たがる私でもめげずに接してきてくれたからだと思いますけど。
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