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暫くそんな考え事をしている最中、吸血鬼はそんな私に何も言ってきたり絡んだりはしてこなかった。
まるで私の事はすべてお見通しと言わんばかりの彼の態度に、少しだけ腹が立ったのは内緒だが。
見慣れた景色が目に入ってきて、建物を指さして「あ、村ですよ」と吸血鬼に言った。
私とチビで村に戻ると、コスプレしていない破壊神さんが私の名前を呼びながら出てきて私に抱き着いてきた。
「は、破壊神さんっ...!」
赤い髪は腰位まで伸びていて、最近そういえば見ていない姿だな、なんて思って彼女の顔を見ていたら、今日はスッピンみたいで、きりっとした目が特徴的なお姉さんになっていた。
久しぶりに会ったと錯覚させられる姿の彼女が私の骨が折れそうなほど力強く私の体を抱きしめるので、魂が抜けそうなくらいだった。
そんな私の様子を一歩離れた場所から吸血鬼は微笑ましそうに見ていた。
助けてくれよ、と心の中で密かに吸血鬼を恨んだ。
「あ...のっ!破壊神さん、私、吸血鬼狩りしてくる。村のために。
暫く帰らない、根絶やしにしてくる、村のために。」
「イリス、そこの奴は?吸血鬼だろ?そいつ手始めに蒸発させりゃいいじゃん」
彼を指さしてそういう破壊神さんに本当にその通りと心の中で破壊神さんの味方をした。
言葉に詰まって何も言えなくなった時に、あらかじめ打ち合わせしてた最終手段が頭にちらついて仕方がなかった。
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