Memory.1 【別れの挨拶、笑顔の旅立ち】

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『僕の事を 夫、っていえば殺す理由にはならないし、君にも少しだけの休暇があると思うけど。これを言うかどうかは君次第だから、ね』 そう言って口に人差し指を立ててウインクしてきた吸血鬼のあの顔は忘れてなるもんか。 「...すまない破壊神さん、私にこの人は殺せない」 ばつが悪そうに目を伏せると、破壊神さんは凄い勢いで心配してくれた。 「イリス、脅されているのか?」 「ち、ちがっ...、さっき、本当に今さっき私は恋に落ちてしまったんだ。 ダメだって分かってる、でも…黙っていてくれないか、彼とこの村を平和にするために旅が終わったら、きちんと覚悟を決めるからっ...!」 本当は今すぐ殺してやってもいいくらいだけれど、と言うほどの心の余裕位はあった。 「...イリスがそこまで言うなら分かった、危険を感じたらすぐに帰ってくるんだよ」 念を押すかのように破壊神さんにそう言われ、ふにゃあっと頬を緩ませて笑った。 「ありがとうございます」 何だかんだ、破壊神さんはいつまでたっても詰めが甘いし騙されやすい。 本当は傍で守ってあげなきゃいけないんだけれど、少しだけ休暇満喫してきます。 「アレス」 はにかみながら彼女の名前を呼ぶと、破壊神さんは犬のように反応して嬉しそうにしていた。 「少しだけ、留守を頼みますよ」 優しく破壊神さんにそう言って、彼女の頭を撫でた。
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