Memory.1 【別れの挨拶、笑顔の旅立ち】

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思い出す前に私は過去から逃げるように村を後にして自分の部屋に帰った。 ...やっぱり自分の部屋は落ち着く。 もう何も思い出したくなくて目を瞑って必死に他の事を考えるけれど、一度思い出してしまったらもう逃げる事なんて出来なくて。 『...二百年前以来ですね』 先程チビが言った一言がさっきから私の頭の中をぐるぐると回って消えない。 二百年前、そう二百年前に、私は全部捨てたはずだったのに。 ザーッとラジオのノイズが大音量で耳の中で流れている感覚。 これ以上は駄目って私の頭が警告している。 だけれども、私は___。 「 イリス 」 「______ッ!」 懐かしい、場所。 呼吸が出来なくなって、心拍数が上がって、頭の中もうどうなってるのかわからなくなって、私は。 「 馬鹿だなぁ、今日もここに来たの?神様なのに変な人 」 ___これは、夢だ。 嗚呼、彼は夢の中でも人を小馬鹿にして、でも笑顔だけはとても愛らしくて。 私の事、全然怖がったりしなくて、むしろ大好きって言ってくれて。 人間で初めてだった、私を受け入れてくれた彼。 今はもう、生きていないはずなのに。 これは私が作った幻覚か、夢か、どちらにせよ今生きている時代とは違う場所。 今すぐ彼の名前を呼びたい、けれどそんなことしたら戻れなくなるような気がして。 「ごめん、今日はもう帰らなきゃ」 帰って、それで私は、どうするんだろう? 「 ...そっか 」 「待ってくれている人が、いるんだ。だから___もう貴方には頼らない」 私は、そう静かに告げて目を閉じた。 目の前にいる彼の姿を消すかのように、過去に捕らわれるのをやめるために。
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