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「いつでも帰っておいで」
いつから破壊神さんはこんなに頼れるような雰囲気の人になっていたのでしょうか。
「暫く帰ってきませんよ、こんな過疎村」
そんな事にすら気付けていなかった自分に悔しくて、破壊神さんに毒を吐くのが精一杯だった。
やっぱり時間が止まっていたのは私だけだったみたいで。
まだ完全に乗り越えた訳では無いけれど、少しだけ前に進まなくちゃいけないっていうのは頭の中にあって。
「過疎村って...確かにそうだけど酷いこと言うよね」
私の隣で吸血鬼は笑いを必死に堪えているのか知らないが、堪えきれていないぞそれは。
「じゃあ、行きますね」
隣の吸血鬼を一睨みすると、私は破壊神さんに向かって改めて別れの挨拶をすることに。
破壊神さんはそんな私達の姿を見て笑っていると、ピタッとその動作をやめて私の目をまっすぐに見た。
「...いってらっしゃい」
何か言われるのかと少し身構えたが、どうやらその心配はいらなかったみたい。
破壊神さんは泣きそうなところを必死に笑顔になって送り出そうとしてくれているのだろう。
「いってきます」
それなら、私もその気持ちに答えなければ。
五百年、一時も離れることが無かった私達が数年ほど離れる日の別れの挨拶。
沢山の思い出が溢れてくる中で、私も泣かないように笑顔になって背中を向けた。
帰ってきたら沢山のお土産話をしてあげよう。
久しぶりに林檎のうさぎさんも帰ったら作ってあげよう。
私の帰ってくる家は、ここにしかないのだから。
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