315人が本棚に入れています
本棚に追加
/117ページ
もう死体と変わり果ててしまった物から足を離すと、立ち上がって彼と目線を合わせてから城内を指さした。
「取り敢えず中に入って探せばいいですかね」
多分この人も、なんでこんな構造なんだって少なからずは思ってそうだけど。
「二手に別れます?」
そっちの方が効率よさそうだし、私も彼もヘマしなければこんなところすぐに出られると思ったのですが。
「駄目です、それだけは絶対に駄目です」
なぜか首を全力で横に振ったのは私では無く吸血鬼で。
「貴女と離れるなんて僕は気が狂いそうになるんですが」
そんな大袈裟な。何を言っているんですかこの人は。
「分かった、分かりましたから。一緒に行けば満足でしょう?」
私がそう首を傾げて問えば、目の前の吸血鬼は笑顔で頷いて来た。
それはもう、殴ってやりたいほどの満面の笑みで。
目を細めている彼を見るのは、少しだけ怖く感じる。
笑顔を作っているような気がして。お互いに何にも知らないから...だからなのでしょうか。
それに私はまだ___彼の名前さえ知らないのだ。
結婚してなんて言われて相当驚いたし、何で出会ってすぐにって戸惑ったし。謎ばっかで、私の事しか知りたがらないし私の事しか優先しないし、さっきだって…。
『イリス!大丈夫?』
普通は自分の事で手一杯だったはずなのに。同族なんだし私より吸血鬼の味方に普通はなってあげなくちゃいけないはずなのに。
最初のコメントを投稿しよう!