Memory.2 【微量の毒と、消化しきれない多量の愛】

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...本当に、謎な人ですね。 私の言動で一喜一憂している彼を見て、小さな笑みを零して城の中に入った。 そんな私に目を丸くしている彼に向かってわざとらしくため息をつくと、手招きをして「行きますよ」とだけ言った。 多分こんな場所で一緒に行くか行かないか話し合っていても時間だけが過ぎていくだけだろうし。 今回だけ折れてあげることにしたのはいいのですが、嬉しそうにこちらに来る彼を見て選択を間違えた気が物凄くしてきました。 「さ、行きましょう」 また、目を細めて笑う。そんな彼を見て何にも言えなくなった私は先に歩く彼を近くにあった石で殴りつけた。 そんな致死に至る大きいのではなく、私の手のひらより少し大きいくらい...かな? 今までの事を全部思い返して無性に腹が立ったのだ。少しくらい気絶して黙っていてくれてもいいじゃんか。 「もー、痛いなぁ、これも一種の愛の形かな」 ...誰だ、石で殴ったらどうにかなるっと思った奴。 気絶するどころか直撃を食らっているのにピンピンして言う言葉が悪化しているではないか。 「少しその顔どうにかして下さい」 うざったそうに言うと少し考えているのだろう。吸血鬼は暫く間をおいて「無理」と私に微笑んだ。 無理じゃなくてしろって言ってるんですが、なんでこうも話が彼のペースに巻き込まれてしまうのでしょうか。 「もういいです」と諦めた私は城内で目が留まった適当な一部屋を指さした。
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