Memory.2 【微量の毒と、消化しきれない多量の愛】

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「取り敢えず手当たり次第入っていけばそのうち見つかるでしょう、多分」 「多分、ね。僕の行くところはイリスの行くところだからいいんだけどね」 なんてそんな恥ずかしいことをサラッと言うんだろうか。 彼はそんな事を考えている私をやや無視して私が指さした部屋の扉を先に開けてくれた。 「ここは...書斎、みたいなゴミの集まりみたいな。随分散らかってるから足元には気を付けて」 私も彼と同意見でこれはただのゴミの集まりにしか見えませんね。 こんな時でも気を使う所を見ると、私がどんくさいと言われている気分になりますね。全く失礼な。 部屋にある大量の書物には、埃が積もって独特な臭いもする。正直な所、この部屋は居心地がとても悪い。 火をつけてやっとましになるかと言うくらいの部屋の惨状に、長年使われていないことを確信して書物に手を付けていた彼を置いて部屋を出た。 埃が積もっている筈もない場所に積もっていたということはそれだけで詳しく調べる必要も無いでしょう。 彼の方も目を引くものはそんなに無かったようで、私が出たそのすぐ後に出てきた。 「何が黒魔術なんだか」 やれやれ、と言う表情で肩をすくめていた彼に私は少しだけ首を傾げた。 「吸血鬼も黒魔術するんですね」 「僕は絶対しないけどね、あんな馬鹿らしい呪い事」 その一言で彼が心底黒魔術と言うものを嫌っているというのが容易に分かった。
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