Memory.2 【微量の毒と、消化しきれない多量の愛】

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黒魔術は話にしか聞いたことはないが、単なる願掛けの類だとは思う。諸説うんぬんあるらしいけれど。 そんなただの願掛けに生き血だのなんだのを使う方法は個人的にもどうかとは思うが。人道的に考えて。 「私もあんまり好まないですかね」 そんな事を言った私に彼は驚くこともなく、うんうんと頷いていた。 「材料の集めるの面倒臭そうですもんね、私は絶対にやりたくないです」 彼が何かを言う前に間髪入れずにそう言葉を続けた。きっと同意の言葉だったと思うから。 私は別に行為を駄目とは言わないし、個人的な意見としての言葉だったと理解して貰おうと思った故の回答だった。 「確かに。貴女からしたらやりたくなさそうなものですね」 「呪いや過激な思いは、私の元にもよく来ますからね。神ですし。その度にうんざりしますよ、本当。」 神と言えど、沢山の担当があって私の元にはそういうのが多く届くからっていう事も大いに影響しているのかもしれませんが。 「その呪いは、叶えてあげるものなの?」 「叶えませんよ、馬鹿らしい。誰を呪うにしろ本人の勝手ですが、変な噂が増えて人が来るということは私の仕事が増える。なんて嫌ですよそんなの」 怪訝に顔を歪めてそう言った後に溜息を吐いた。 「本当に面倒なことが嫌いなんだね」 私の言ったことのどこが面白かったのか、彼一人だけで大笑いしていた。 面倒くさがるのが私の個性なんですから仕方がないのに。この人はどこまでも失礼な人ですね。
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