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...まあ、黒魔術と言うくらいですからもちろん素手で壊しにかかろうと物で壊そうとこの檻は壊れることはないでしょうけれど。
ただ、私のためにそうやって動いてくれる彼の姿が嬉しくて。どこか意地悪をしたくなって。
「さて、困りました。眠いのでここで一睡してもいいですか」
本気で彼が心配してくれているというのに当の私は焦る素振りなど全くしませんでした。
まあこんな檻出ようと思えば容易に出れないこともないと思いますし。
「何言っているのっ...」
「私の事は捨て置いて下さい。暫くこの檻の中で過ごすことにします」
「...ふざけないで。貴女の休暇のために僕たちはここにいるんだよ、忘れたの?すぐにそこから出してあげるから、だからそんなこと言うなよ!」
私のおふざけだというのに彼は必死に近くにある本に手を付け始めていた。
「もういいですよ、吸血鬼さん。私が反応を見て楽しみたかっただけですので。私は大丈夫ですから。部屋の外に出ていてください」
ただ反応が見たかっただけなのに、あんな悲痛そうな顔をされて、そんな必死になられている中でからかっている場合じゃなくなりましたし。
「でも、一度発動した黒魔術をどうやって...?」
「貴方は今更何言っているんですか、神様であるこの私に向かって。」
私が呆れて小首を傾げている間に彼は私の言った通り部屋の外に出てくれたようです。
...うん、聞き分けのいい人は嫌いじゃありません。
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