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「下界の蝙蝠風情が神様のためにまあこうやって無駄な時間を費やしてくれて私は嬉しいですよ。どうやら誰にでも発動するわけでは無いようですし、そこはまあ置いといて。」
にっこりと笑って地面に手を付けて中心部の核となる何語かわかんないフニャフニャした文字を手で跡形もなく消した。
「馬鹿馬鹿しい。こんなもの」
轟音が響く中で、彼にも聞こえないような声の音量でそう吐き捨てた。
私が文字を消した後に、効力を失った檻は一本の柱からどんどんと欠けて行き、最後には跡形もなく消えた。
「私だって少しくらい心得はありますよ。神を呪うなんて立場を弁えない下等動物は大嫌いなんです」
少し頬を膨らませてむくれてみると、彼は何に安堵したのか張りつめていた力を抜いて私の前まで来ると、小さな声で「良かった...」と言って私の手を握ってきました。
「もう危ない真似だけは僕にやらせて。心配して死ぬかと思った」
「なかなか死なない吸血鬼が何言ってるんですか」
吸血鬼は一回死んで蘇生したゾンビのような存在と耳にしたことがありますが、ここまで図太いなんて知りませんでしたけどね。
二回目の人生を歩けるなんて幸せなんでしょうね、とその話を聞いた当時はきっと能天気にそんなことを私は思っていたんでしょう。
「兎に角、もう危険な真似はしないで。特に今回は下手したらどうなっていた事か...」
「吸血鬼さんは少し心配しすぎじゃないですか?」
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