Memory.2 【微量の毒と、消化しきれない多量の愛】

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「イリス、その...吸血鬼さんって言うのどうにかなりませんか?」 「どうにかなりますよ?」 彼が言いにくそうにそう切り出した言葉に私は普通に即答した。 「えっと、じゃあ呼び方を変えてくれると嬉しいんだけど」 「その前に、名前を教えてください。」 呼び方も何もかもの前に、この人名前を私に教えていないじゃないか。早い話は名前を教えてもらえばいいのだ。 私は何だかんだ破壊神さんの所のチビが言うから自分の名前を知られてしまう羽目になったが、彼の名前は聞いていないのだ。 少し理不尽なのではないかと思っていたのだが、彼は名前を教えていなかったことを忘れていたのか、「あ」と本当に顔に書いてあるかのような表情をした。 「...その顔はもしかして忘れていたんですね」 「いやぁ、あの時の僕は本当に間抜けだったね。名乗るのが遅くなって申し訳ありません」 そう言って彼は黒馬術の魔法陣があるのに、もうそれには目も暮れずに地面に片膝をついて片手を胸に当ててまっすぐに私の目を見た。 「僕の名前はヴァレンです。」 「...そうですか、しっかり覚えておくことにします」 先程までは暫く名前が聞けないと思っていましたけれど、こんなに早く聞くことになるとは思ってもみませんでしたけど。 「ヴァレン」 愛称をつけるのもなんだか抵抗があったので、無難に教えられた通りの名前を呼んでみた。
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