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私のクラスには、完璧くんが存在します。
「かぁっこいい」
隣の席で、友達の瑠璃(るり)ちゃんが完璧くんを見つめてハートを飛ばす。私も視線を瑠璃ちゃんから完璧くんに向けた。
昼休みと言うこともあり、完璧くんの周りにはクラスメイトが沢山居て、そこだけ騒がしい。テレビを見ている感覚で、ぼんやりと眺めた。
「容姿端麗。文武両道。更に中身も良いときた」
「そうですね」
「良いなぁ。お近づきになりたい」
瑠璃ちゃんの語尾にハートが付いています。
完璧くんの名前は、何て言ったかな。関わりが無さすぎて、覚えていません。高校に入って、今年で2年目。初めて同じクラスになりましたが、特に何もありません。
噂では、モデルやら何やらスカウトされまくっているそうです。スタイル抜群でイケメンですからね。しかし、全て断っているのだとか。
テストの順位は必ず5位以内。この前の1学期中間テストでは、1位だったらしいです。瑠璃ちゃんが騒いでいました。
部活には入っていないらしいですが、運動神経も良く。体育の時間は女子の悲鳴、おっと、黄色い声援が飛びます。
完璧くんは、爽やかで優しくて気が利いて頼りになって……等々。まぁ、そんな感じらしいです。
「良いわぁ」
「瑠璃ちゃんは、彼氏がいるじゃないですか」
「イケメンは別腹だから」
「そういうものですか?」
「まぁね!」
瑠璃ちゃんが、ドヤ顔で言い切るのだから、そういうものなのでしょう。
再び視線を完璧くんに向ける。完璧くんは輪の中心で、笑顔を振り撒いていた。
私としては、完璧すぎて取っ付きにくいと言いますか。仲良くなれる気が全くしません。
「お手洗いに行ってきますね」
「はいよー」
瑠璃ちゃんに一言伝えて、席を立った。
出口に向かって歩いていく。扉から廊下に出ようといた瞬間、教室に飛び込んできた男子と衝突した。咄嗟の事に反応出来ず、体が後ろに傾いていく。これは転けると諦めて、衝撃に備えて心の準備だけはしておくことにした。
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