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「またお前が女子トイレに入るんじゃないかと思って、昼休みのたび後を付けてたんだ。他のやつに見つかって大事になる前に、俺が注意しようと思ってさ」
それだから、高井のクラスの教室に彼の姿がなかったのだ。
今思うと、ズボンのチャックを上げる音は聞こえなかったのではなく、するはずがなかった。
例のトイレが汚くなかったのも、高井が掃除していたからだ。
何もかも僕の勘違いだったのである。
「このことは誰にも言わないでおくから、もう馬鹿な真似はするな。俺からしたら、勉強のできるお前は完璧なんだから」
と高井は言った。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴る。
高井は僕より先に階段を上がっていった。
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