レモン

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僕が彼の奇行を垣間見たのは、2週間前のことだった。 僕の通う中学校には、いわゆる不良が多い。 彼らは制服のズボンを腰のあたりまで下げて履き、いちいち恐い顔をして、肩を揺らしながら廊下を歩いている。 さながらその様子は、巨体をくねらせて泳ぐサメのようだった。 痩せぎすで、イワシのような僕は、彼らとすれ違う時、なるべく目を合わせないようにしている。 彼らにとって僕は格好の餌なのだ。 ちょっかいという名の暴力で味わわれるのは、目に見えていた。
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