レモン

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入り口に近い小便器の前に立ち、制服のズボンのチャックを降ろそうとすると、妙な音が聞こえてきた。 ギシギシギシギシ――。 僕はチャックを下ろそうとした手を止め、音の出所を探った。 ギシギシギシギシ――。 どうやらその音は、ドアが閉まった個室からしているらしい。 洋式の便器の便座が軋む音のようだ。 微かに衣擦れの音もする。 間断なく聞こえるそれらの音を聞きながら、僕は考えた。 何をしている音だろう? 排便しているだけなら、便器が軋むことなどあるはずがない。 よほど貧乏揺すりが激しい者なのだろうか。 心なしか短く荒い息も聞こえる。 癖であろう貧乏揺すりをして息が切れることはないだろうから、貧乏揺すりは考えられない。
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