第1章

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 双子の名は、兄がフロレスタン、弟がオイゼビウスという。  双子であったが兄弟は決しておもざしが瓜二つというわけではなく、性格に至っては月と太陽のごとくであった。  しかし二人揃って優れた容貌をもち非常に聡明であったため、両親は二人の息子を溺愛し、彼らのために与えられるものは全て与えようとしたのであった。兄弟は学校にこそ通わなかったが、あらゆる分野において高度な教育を受けていた。  その一方で兄弟はその合間にも好奇心の赴くままに絵を描き楽器を演奏し、詩作をしたりして自ら感性を磨いていったが、何にでも興味をしめし試してみる兄に対し、弟は特に音楽にのめりこみ、一人部屋にこもってピアノを弾き、たくさんの楽譜を集めて評論をしたり書いたりして過ごすことが多かった。
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