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今
確かに彼は俺を見た
バチッと視線と視線がぶつかった
…………でも彼は今の今まで
俺の事に気がついてないようだった
昨晩の真っ暗な中で出会った
その場限りの奴の事なんて
彼にとってはどうでもいいはず
………………そうだ 気のせいだ
俺の事なんか見てない 覚えてない
俺は 俯いてた顔をそろそろと上げて
気のせいだったと確認しようと彼を見た
「-------------------ッ!」
今度はハッキリと目線が合った
彼は確実に俺の方を見てニコッと微笑んだ
俺は驚きのあまり もう一度顔を下げて
胸のドキドキを抑えようと
胸の前で手の平をギュッと押されて
胸の高まりを静めようと必死になった
先程の腹痛も忘れ 違う箇所に痛いくらいの
圧迫感に窒息しそうで苦しかった
「………………………」
俺は知らなかった
その時 光希が俺の様子を見て
不審そうな顔をしていた事に
そして俺の様子を見てから 彼に視線をやり
彼の目線がどこに注がれているのか気づいた事に
俺は知らなかった
どんなに殴られても どんなに蹴られても
どんなに酷い目に合わされても
何年も耐えてきた俺が
それらの日々以上に辛い毎日が待っている事を
本当に残酷なのは
感情を持ってしまった事だという事を
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