辛い日々の始まり

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俺は目の前の光希の存在を忘れて 昔の事を思いだしていた 俺が無視したと思ったのか 壁に背中をぶつけてきた はっとして光希を見ると腹に拳がめり込み うっ……と込み上げる吐き気を飲み込んだ 「……………ふん、ゴミの分際で 人間ブッてんじゃねぇぞ 今枝さんに相手にされたって 勘違いしてるんだったら 全然違うからなっ!俺に勝ったなんて 間違っても思うんじゃねぇぞ!」 「……………………………」 そう言って光希は俺から離れていった ………………確かにそう思った 今枝さんが光希を名前呼びしなかった時 俺を選んでくれたって本気で思った ………………………馬鹿だな 俺は 今枝さんが俺を伊月って呼んでくれたのを 何か特別な意味のある事のように思って 何を勘違いしていたんだろう 俺みたいに汚い奴が 誰かの特別になるわけがない 俺は人間以下の ただ息をしているだけの生き物だ 光希の影で 誰にも見つからずにひっそりといる 俺達は光と影だ 影は永遠に光にはなれない どんなに光に憧れを持っていても 所詮影は影 悲しい人生だけど それは俺も望んだ事 今までだって それで平気だったはずなのに 俺は馬鹿だ なんで誰かの特別になりたいなんて そんな事を思ってしまったのか そんな事を考えるだけ 自分が傷つくだけなのに …………誰かに自分を見て欲しいなんて
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