辛い日々の始まり

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暫くはそれで本当にいいのかなど しつこく募られたが 俺が顔に痣があるからと 言うと漸く納得してくれた 「それじゃあ仕方ないな お年頃の男子は恥ずかしいかもな ……………うしっじゃあ伊月に合わせるか でも学生さんだから あんまり遠くに行かないようにしないとな? とりあえず 車走らせて どっか落ち着いて話せる場所を探すか?」 「…………………」 ………………………やっぱり失敗したかも ドライブなんて………… どういう風にしていいのか分からない 車の中でずっと沈黙だったらどうしよう こんなつまらない奴 乗せるんじゃなかったって 思われたらどうしよう つまらなそうな顔をされたら 立ち直れないかも 「……………伊月?」 名前を呼ばれてハッとして顔を上げた 「ほら、こっちだから」 「ッ!」 今枝さんに微笑まれながら 手をギュッと掴まれた 「………………………」 ……………………………暖かい 誰かに手を握られた事なんて あっただろうか こんなに優しく触られた事がない ぞんざいに扱われた事しかない 人がこんなに温かいなんて知らなかった 握られた掌から彼の汗が滲んで むず痒くなるほど恥ずかしかった きっと俺の掌は もっと汗をかいているだろうから こんな事は今枝さんにとっては 何て事ないんだろうけど 俺にとっては泣きたくなるくらいに嬉しい そう…………嬉しい この人といれて この人と並んで歩いて この人の事もっと知りたい この人とずっとこうしていたい この人は俺の事 どう思ってんのかな
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