辛い日々の始まり

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今枝さんの車に乗ろうとしたら 彼は俺の行動に目を白黒させて 「え?どうした?何してんの?」 「?」 突然 今枝さんに止められたけど 何か間違っただろうか 「いやいや、何で後部座席? いいから助手席に来いよ」 「………………はい………」 …………完全に無意識だった 普通はそうだったな………… 今度はちゃんと助手席に座って 今枝さんは何処とも言わずに車を走らせた 「……………………」 ………………………どうしよう やはり危惧していた通り 何を話していいのか分からない 何か話さなきゃと思っても 言葉が上手く出てこない 考えてみたら 俺達は昨日知り合ったばかりの 他人だからお互いの事を知らない どんな話を振っていいのか見当もつかない ただでさえ友達がいないから 人と話し慣れてないのに 大人の男の人なんて何を言っても つまらない顔をされそうで恐い 沈黙が重い 「………………伊月って苦手な人?」 「っえ!」 突然話しかけられて驚いた声が出た 「うん、何ていうか 人とコミュニケーションを取るのとか 話す事というか 表情作る事というか」 ……………………全部苦手だ 苦手というより俺には必要ない 話したい相手もいなければ 向こうから俺に話しかけてくる事もない あくまで必要最低限しか話さない 「…………………苦手です」 両手で拳を作ると 汗が滲み出る感覚が 気持ち悪かった 緊張しすぎて凄い汗だ 「ふぅん、じゃあ俺は?駄目?」 「………………………」 ………………………駄目じゃない 俺がフルフルと首を振ると 「なら もう少しこっちに歩み寄れよ そんな硬い顔してないで な?」 「………………………」 今度はコクコクと頷いた 「………………はは、すぐには無理そうだな 少しずつでいいから」 「………………………」 そう言ってまた頭を撫でられた
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