辛い日々の始まり

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「………………………ぅっ……ぅっ……うぅっ……………」 暫くその場で泣き続けていたが いつまでそうしていても 仕方が無いと思い直し どうせ雨でびしょ濡れになってしまったし 涙を拭うこともせずに トボトボと家路の方へと歩き出した 周りに人がいなくてよかった こんな奴 見た人はまた嫌な思いをしてしまう 俺の存在は人を不快な気持ちにさせるだけだ どうして 目を背けてきた現実が 今になってこんなに胸に突き刺すのか 感情とは何て厄介な物だろう 早く以前の人形に戻らないと 押し潰されそうだ 「……………………」 このまま 雨の中に溶け込んで 消えてしまえたらいいのに 「………………………………ぁ…………」 家に帰りたくなくて ゆっくりゆっくりと歩いていると どしゃぶりの雨の中だというのに 傘もささずに 向こうの方から人影が見えてきた 「……………………………………………………ッ!!」 ぼんやりと眺めていた その人影の輪郭がはっきりとし 相手の顔がわかった 「--------------ッ!ッ!ッ!ッ!」 俺は何かを考える前に 本能的にその相手から逃げ出した 雨で路面が滑って走りにくく 半ば足が縺れながらも必死になって走った 「---------------------------ッ!待て!伊月!」 相手がそのまま俺を追いかけ 俺は追い付かれないようにと さらに無我夢中で走るが やはりリーチの差があるせいか すぐに追い付かれ 腕をガッシリ掴まれて 無理やり相手の方に身体を向けられた 「はぁ はぁ はぁ はぁ…………」 いきなり思いっきり走ったせいで息切れがし 泣いてしゃくり上がりそうになるのを 必死に押さえるのが苦しくて 胸が張り裂けそうで仕方がなかった 何でここに この人がいるのか分からなかった 「…………………………」 「……………………はぁ…………はぁ………… ………………探した………………… 探したよ 伊月…………………」
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