辛い日々の始まり

28/103
前へ
/469ページ
次へ
「…………………伊月…………… お前は俺だけのものだ……誰にも渡さない 俺だけの……俺だけの人形だ…………」 ………………………この人は本当に悠真兄さん? 悠真兄さんはあの後も何度も俺を説得した あまりの兄さんの変貌ぶりに混乱し なかなか返事をしない俺に焦れて 有無を言わせずに強引に腕を引っ張り 何処からか来たタクシーに乗って 半ば無理矢理ホテルに連れ込んだ 雨でびしょ濡れだった俺はすぐに シャワーを浴びに向かおうとしたが 悠真兄さんはそれを許さず いきなりベッドまで連れていかれた 殴ったりしないと言ったのに 一連の行為は止めてくれなかった 悠真兄さんの考える事がわからない また殴られるのかと思っていたけど 最中にはいつも殴るのに 今日は最後まで暴力はふるわれなかった こんな事今まで1度だってない 悠真兄さんが俺を殴りもせずに 一連の行為をした事はない 毎日毎日 行為は行われるけれども 必ず暴力は受けるし 顔を見合わせながら行為に及ぶのは 今日が初めてだ 悠真兄さんは何回も何回も 俺に気持ちがいいかと聞いてくる 毒素を注ぐ行為に 気持ちがいい云々は関係あるのか 悠真兄さんのこの行為の意味は何なのか 何で俺にこんな事をするのか 何でこんなにも俺に優しく触るのか 何で急に人が変わったように豹変したのか 何もかもがわからない わからないけれども 受け入れるしかない 悠真兄さんが求めるなら でも心の中は辛かった 行為の意味はわからないけど 辛くて辛くて仕方なかった 生理的な涙が勝手に流れて 訳もなく胸がズキズキ痛んだ 俺の涙を見て悠真兄さんが嬉しそうに 笑うのが痛々しくさえ感じた
/469ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1134人が本棚に入れています
本棚に追加