辛い日々の始まり

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「伊月 俺がいない間いい子にしてるんだよ この部屋から出たい時は 俺に絶対に連絡して 俺に無断で外に出るような事は 絶対にしないように 伊月を信じているから 閉じ込めるような真似はしないけど 心配だから今日の会社帰りに 伊月用の携帯を買っておくよ 俺からのメールがあった時には 必ず返信するようにするんだよ いいね」 次の日の早朝 悠真兄さんは 会社に向かう前に 俺に何度もホテルから出ないように 念押ししてきた 「はい、わかりました いってらっしゃい 悠真兄さん」 「あぁ、行ってくる」 「………………………」 悠真兄さんは出て行く時 仄かに微笑みながら 俺の身体を抱き寄せ しばらくそのままジッとした後 すぐにいつものクールな兄さんに戻り 出ていった ………てっきり閉じ込められるのかと思った ……………今のあの人だったらやりかねない でも 案外すんなり出かけてくれて助かった 兄さんには悪いけど 大人しくこんな所に 待ってる訳にはいかない 罪悪感はあるにはあるが 悠真兄さんが会社に行ってる今しか ここから抜け出すのは無理だ やっぱり今枝さんがどうなったのか気になる 悠真兄さんの あの言い方だと 絶対 何か大変な事を彼にしたんだ……… …………………入院中だなんて 今枝さんの身に一体何が起こったんだろう どうしても嫌な予感がつきまとう …………せめて無事だという事を確認しないと …………でもどうやって調べればいいんだろう 俺は今枝さんの事は何も知らないし 何処の病院で 本当に入院したのかもわからない こういう場合はどうすれば…………… 「…………………………ぁ…………」 そういえば………… 俺はある事を思い出して 自分の鞄をガサガサと漁り出した 「……………………………あった」
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