辛い日々の始まり

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彼の家に行くのに地下鉄を乗り継ぎ コンビニで地図を見ながらの試行錯誤の末 やっと彼が暮らしているであろう マンションに辿り着く事が出来た 「…………………………」 来るまでは道がわからずに必死だったが いざ着いてみると さすがに二の足を踏む ……………やっぱりどう考えても 来るべきじゃなかったかも 突然 俺なんかが訪ねたら迷惑だろうし そもそも俺達は 学校で多少の繋がりがあるだけで 家を訪れるほど深い仲でも無い ………………でも彼の様子が わからないままでいるのは嫌だ 長い間うろうろしながら どうしようと考えあぐねたが せっかくここまで来たんだし このまま帰ったら絶対に後悔する そう自分に言い聞かせ 意を決して マンションのエレベーターへ向かった 彼の部屋がある13階に辿り着き 目的地の玄関の前に立った 先ほどからどんどん胸の鼓動は高なっていき まず何と言葉をかけようかと 頭の中でシュミレーションしながら 呼び鈴の所に指をかけた だけど なかなか勇気が出ずに 人差し指がうろうろと空をさ迷い 時間が経てば経つほど緊張感は募っていく さっき何て言おうか考えていた事も 半ばパニックになってしまい 頭の中から消えてなくなっていた 「………………………………伊月」 突然の声に肩が震え驚いて振り返った
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