辛い日々の始まり

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「何か飲む? といってもお茶かコーヒーしか無いけど」 「大丈夫です お構いなく」 「そう言うなよ インスタントだけど今持ってくるから」 「…………すみません」 今枝さんは よっこらせと言いながら ゆっくり立ち上がり のろのろと歩きながら台所の方に消えていった その後ろ姿を見ながら 言い知れぬ不安に襲われた ………やはりどうも元気がない 昨日まであんなにイキイキしてて 明るい笑顔を振りまいていた人とは思えない まるで別人のようだ その暗い雰囲気の動きと表情から 死神のように見える でも だからって どうしたんですかって聞くのも失礼な気がする やっぱり黙って 見て見ぬ振りするしかないか……… インスタントを作るのに こんなに時間がかかるのかと思うほど 長い時間が過ぎた 時計を見ると俺がこの部屋に入ってから 既に30分は経っている 台所の方はシン……と静まり返り 何か作業をしている様子でもない ……………何だろう 先ほどからずっと気になっているものの 見に行く勇気がない 何だか とてつもなく嫌な予感がする それでも このまま黙って待ち続けるより マシだと思い 俺はゆっくりと立ち上がり そろそろと足音を偲ばせながら 台所の方へ近づいていった
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