近づいてくる

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近づいてくる

 親の転勤で引っ越しをした友達から遊びに来ないかと誘われ、相手の家を訪問することになった。  住所と付近の様子を教えてもらいはしたけれど、土地勘のない人間が頼るのは文明の利器だ。  当然のようにスマホを握り締め、ナビに頼り切って友達が暮らしている土地に向かった。  だけどどういう理由か、降車指定のバス停辺りからスマホの画面が映らなくなった。  色々試したけれど無理。というか、電話も繋がらないしメールも届かない。  スマホが壊れたか、あるいは他の理由かは判らないけれど、もう文明には頼れない。そう腹を決め、俺は、聞いていた周辺説明と、最初にざっと目にしておいたナビの地図の記憶を頼りに友達の家を探すことにした。  住宅地はこんなものなのかもしれないけれど、やたらと似たような家ばかりが立ち並んでいる。  ここでの目印は自販機らいだけれど、幸いにも友達の家に向かうルートには大きな目印があった。  今はもう閉店してしまったタバコ屋さん。そこには今も現役の自販機と郵便ポストがあるから、他とは間違えようがない。  バス停から真っ直ぐ歩いてきたら、そこが右手に見えるから、まずはそこを右に曲がる。当分何もない住宅街が続くけれど、構わずひたすら直進して、ポストから四つ目の辻を今度は左へ。そこから二番目が友達の家。  聞いていた通りにポストを右折し、俺は殺風景な道を真っ直ぐに進んだ。  まずは一つ目の辻に差しかかる。その時に、通りすぎる右手の方の、かなり遠くに女の子らしき姿が見えた。  多分、この近所の子だろう。  思ったのはただそれだけ。構わず友達の家を目指して前進する。  その、次の辻で、また右手に女の子の姿が見えた。  ちょっと目の端にひっか気ただけの映像なのに、やたらと意識に残ったのは、女の子かの服の色が同じだったせいだ。  上はピンク。下は黄色のスカート。やたらと目立つその色彩は、一瞬目に入っただけでも意識に残る。  だからといって、さっきの子がこの辻の先にいるとはとても思えない。  辻から辻の間には何軒かの住宅が立ち並んでいる。そこを、見た感じからして小学生くらいの女の子か一瞬で移動したとは思えない。  多分、似たような服装の子を見間違えたのだろう。そう考え、さらに先を進んだ俺は、三つ目の辻で足を止めた。  辻の右手方向に女の子がいる。
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