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顔はよく見えないけれど同じ服。いいや、そういうことを抜きにしても、それは同じ相手だと、俺の勘が告げている。
一つ前でも二つ前でも見た女の子。それわ、この世の者だと信じる方が難しい。
どういう理由なのかは判らないけれど、女の子は俺の動きに合わせて出現してる位。それも、どんどん近い位置に。
最初見かけた時は、百メートル以上向うにいた。正確な数字は判らないけれど多分そうだと思う。
二度目の時にはかなり近づいて、五十メートルあるかないかだった。そしてさっきは…一気に十メートルくらいの近さにまで寄って来ていた。
多分…いやきっと、必ず、次真ツ時まで進んだら、あの女の子は俺に寄り添う位置までやって来る。
そうしたら…?
その時は…?
どれだけ考えても答えが出ない。正確には、平穏無事なエンディングを迎えてくれる答えが出ない。
どうしよう。
どうする?
どうすればいい?
困惑が限界を越える…その寸前で救いの手が差し伸べられた。
飛びかけていた意識が現実に戻った時、俺の目の前には友達がいた。あまり耳には入らなかったけれど、どうやら気を利かせて近くまで迎えに来てくれたらしい。
そのおかげで、俺は次の辻をクリアすることができた。
友達を盾にする形だったけれど、何を見ることもなく相手の家に辿り着くことができたのだ。…ちなみに帰りは、地理がおぼつかないと言い訳をしてバス停まで送ってもらったから、
何一つ問題はない。
あれから数十年。
この友達とは今も友人づきあいをしているし、互いの家を訪ねることもあるけれど、俺が向うに向かう際は、必ずバス停までは迎えに来てくれと頼んでいる。
そのおかげで見ることのなくなった謎の女の子。…もう一生見ないままでいい。
近づいてくる…完
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