追憶と今

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その笑みを見て何も言えなくなった俺は、それ以上亜樹のあとを追う事さえできず立ち尽くすだけだった。 すっかり日が暮れて暗くなった夜道に、亜樹の後ろ姿が溶けて消えていく。 「あいつから目を離さないように」という原際さんの言葉が耳の奥底にこびりついて離れない。 また、明日学校で会ったら話しかけてみよう。 そう決めて、来た道を戻り裕希と秀太のいる温かい空間へ足を進めた。 病室に戻るとお見舞いにきている人が増えていた。 裕希の母が心配そうに体調について尋ねていて、裕希はそれに安心させるような柔らかい笑みを浮かべて大丈夫と答えていた。 「あれ?亜樹と一緒じゃないのか?」 秀太が微笑ましい家族の図を見ながら、俺の側によりボソッと尋ねてきた。 「亜樹なら帰ったよ」と告げると、秀太は直ぐに亜樹への関心を失い。裕希に関する話を始めた。 凄い幸せそうに裕希のこと話してて、秀太は本当に裕希のことが好きなんだなとひしひしと伝わってきた。 「なぁ、秀は好きな人いるか?」 突然、秀太が頬を赤らめさせながらぽつりと呟いた。そんな様子を見て返答に悩み無言でいると秀太は言葉を続けた。 「俺はな裕希が好きなんだ」 なんとなく想像していた通りの名前が出てきた。 裕希に聞こえないようにこっそりと、今度は愛を語り出す秀太。 それを聞いている俺の頭の中は疑問符で埋め尽くされていた。 俺は本当に裕希が好きなのかな……と。
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