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「なぁ……亜樹……俺がどっちかわかるか?秀太か秀か……」
後ろにいるから表情はわからない。でも、こんなときにこんな意地悪で変な質問。亜樹はきっと困り果てた顔してるんだなと思った。
するりと亜樹の手が、体が離れる。
振り返ってみると、そこには予想に反していつも通り笑う亜樹がいた。
「ジャージ似合うね秀兄」
どきりとした。
名前を当てられたからじゃない。初めて亜樹が笑ったからだ。
いつもの無表情な瞳はそこになかった。
助けて良かったと思えるほど綺麗で可愛らしい笑みだった。
「なんで、わかったんだ」
速まる鼓動を押さえ込むように、会話を続けた。
「ジャージに名前が書いてあったから」
結局、見分けられてなかったのか。残念に思うところもあったがそれでもまぁ、いいやと俺も気づいたら笑っていた。
そのあと、俺は1ヶ月停学をくらってそのまま学校自体通うことをやめた。
俗にいう不登校となったのだ。
高校への進学は強制的にさせられたが、それもほとんど登校しないで家にこもる日々。
亜樹にはあの後、何かあったら俺の家に電話かパソコンにメールを送ってくれと俺の携帯を渡し言っておいた。
そのときまた、余計なこと言ってしまって。
「ほ、ほら、携帯渡しとけば裕希と関わる時の手助けもしてもらいやすいかなって」
きっとそんなんだから、こうなってしまったのだろう。
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