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なんだか。いつの間にかやばい雰囲気になってることが肌に突き刺さる冷たい視線で感じ取れた。
「ワンワンワンウーワンワン!!!(もう、煩すぎて駄犬は駄犬としての声としてしかき気取れない)」
お手とかしつけたらやりそうだな。でも、駄犬の周りのダメ飼い主がキレそ……
「ワンワンワンワンワンワンワンワン!!!ワンワンワンワン!!!」
犬が嫌いになりそうだな、亜樹をお姫様だっこという女の子なら一度は夢見る抱き方に変えて立ち上がった。
今の俺にできること。それは、亜樹を連れてここから逃げ出して。病院へ強制連行すること。
「なぁ、亜樹もう二度と手放さないから」
ぎゅっと抱きしめて、恥ずかしいから下ろしてともがく亜樹の言葉を無視して走り出した。
勢いだけはよかった。でも体力ってやつはいつだって期待を裏切る。
教室を出てから数歩で、限界がきてしまったのだ。
「本当、恥ずかしい……」
今度は亜樹ではなく、俺が顔を赤くすることになった。
「後先考えないからだよ」
亜樹はそう言って、地面にヘタばっている俺に手を差し出した。
「そうかもな」と言ってその手をとった。
昔から後のことを考えるのは苦手で、その場の思いに任せて行動してきた。
でも、それもいいんじゃないかと思えた。
そのおかげで今があるのだろうから。
もう二度とその手を離さない。迷ったりしない。
だって、俺は亜樹が好きなんだから。
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