予行練習

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その日僕たちはふたり、家でだらだら喋ってた。 「なあ。キスする練習、させてくれん?」 「は?」 思わず眼鏡をあげて碧の顔をまじまじと見る。 「彼女とすればいいだろ」 「ほら、本番のときもたついたらいややん? それにおまえ、彼女と同じ眼鏡だし」 「初キスが男とかいいのかよ」 「カウントされんやろ」 にやりと笑った碧の顔が 僕の返事を待たずに近づいてきた。 「ちょ、待て!」 「待たない」 思わず目を閉じた瞬間、唇に柔らかい感触。 これで気がすんだろうと目を開けると、 碧は僕に絡みついてきた。 相手は男、そう理解しているはずなのに、 ぼーっとなって血液が集まるのを感じる。 唇が離れると自分のものとは思えない、 甘い吐息が落ちた。 「おまえ、感じてんの?」 指摘されてふるふるとあたまを振る。 ……でも。 「俺も。……このまま最後までしてみん?」 その言葉に僕は――。
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