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フランスの郊外の広々とした領地の隅の丘に立つ大きな屋敷。
父は18世紀にしては珍しい民主制を重んじる領主で、領民は皆満たされていた。
都会の喧騒や革命など蚊帳の外。
私達一家はこの屋敷で何不自由なく暮らした。
屋敷自体は他と大して変わらぬ造りだが、我が家は少し変わっていた。
屋敷の周りをぐるりと囲むように薔薇が咲き乱れている。
庭も、塀も、入り口も、色とりどりの様々な薔薇が咲いていた。
それは冬と言わず、夏と言わず、季節を通して咲いており、枯れた姿を見たことは只の1度も無いほど。
父と母との間に子供は私しかおらず、当時としては珍しい一人っ子だったのだ。
母は私を愛してくれた。
乳母には極力預けず、自らの手で育てた。
母は優しく、美しく、儚い女性で、父の領分に一切の口出しをせず家事の取り仕切りだけをしていた。
父は母より12歳上で、いつも洒落ていて結婚してもなお女性には不自由しないような人だった。
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