『自殺する私へ』

3/3
前へ
/3ページ
次へ
『自殺に失敗してあなたは寝たきりになるの。私は今、病院のベッドの上にいる。機械に繋がれて、自由なんてない。病院にいるから、もう自殺だって出来ない。それどころか電車に飛び込んだせいで、莫大な損害賠償を請求されて、お母さんたちにも迷惑をかけるの』  損害賠償。  現実に殴られたかのように、私の頭はくらくらした。  線路を見ていたら、全てを終わらせたくなってしまったけれど、電車の飛び込みには損害賠償が付いて回る。  自分が楽になりたいばかりに、お母さんたちを地獄に突き落とすところだった。  そんなこと、私は望んでない。  私はホームの端から離れる。  そこに電車が入ってきた。  私は電車を背に、ホームを後にした。  そして私は。  ビルから飛び降りた。  私は今、病院のベッドの上にいる。  機械に繋がれて、自由なんてない。  もう自殺だって出来ない。  私は自殺に失敗した。  ビルから飛び降りたあと、偶然下を歩いていた人にぶつかって九死に一生を得た。  人のいない場所と時間を狙って飛び降りたけど、考えが甘かった。  私の下敷きになった人は重体で、お母さんたちはその対応とビルへの損害賠償に追われている。  とんでもないことになってしまった。  やり直さないと。  全てをやり直さないといけない。  私の脳裏にはいちるの望みがあった。  メール。  メールを出したい。  私から私へのメール。  過去へのメール。  メールの題名は。  『自殺する私へ』  end
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加