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えっ!?
と思わず声に出し、反射的にスマホを見る。
メールを受信しただけのようだった。
安心したような、拍子抜けのような、複雑な気分だ。
えっ!?
ネットへは繋がる筈のないこのスマホが、メールを受信した?
あり得ない、でも、受信したのだ。
不信感は募りに募り、同時に好奇心さえおぼえた私は、恐る恐るメールを開く。
差出人は、私だった。
受信したメールの差出人が、私の名前なのだ。
アドレスも私自身のものに間違いはないようだし、疑う余地もなかった。
まさか、私から私に、繋がらないスマホへと、メールが届いたというのか?
大音量のクラシックを流したまま、連なった文へと視線を滑らせる。
『5年前の私へ』
えっ!?
一行目から、私は驚愕した。
5年前、ということは、5年後の私から、ということか。
そんなまさか。
あと50日で、地球は滅亡してしまうのではなかったか。
まさか。
呆然とスマホの画面を見つめる私を包み込む、渋くも美しいクラシック。
太い弦から無理矢理奏でられた高い音が心地好くて、私はふっと、肩の力を抜いた。
高い所から見下すのもいいけれど、地球が滅びると信じて疑わない人間たちの中から無理矢理見下すのだって、まあ悪くないんじゃないか。
それこそ、G線上のように。
クラシックを止めて、スマホをポケットにしまう。
あの、ちょっと苦いコーヒーが飲みたくなってしまった。
とにかく私は、その時が来るまではせめて、家族の元を離れないでおこうと思った。
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