第1章

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外は、多分もう、滅亡している。 地球の滅亡は50日後、人間としての滅亡は、3年前。 道路は白い粉でも降りかかったようにくすみ、何かの破片が点々と散らばっていた。 周囲の建物は全部廃屋で、ガラスが割れているのはもちろんのこと、壁が破壊されている建物も少なくはない。 私が外に出たのは、何日ぶりだろうか。 高い空は、とても綺麗な青色をしていた。 こんなに綺麗なのに、終わっちゃうんだよなあ。 私はポケットからイヤホンを取り出し、スマホに接続すると、耳に差し込んで音楽を流した。 G線上で美しく奏でられたクラシックだ。ずっと、この曲ばかりを聴いている。 耳元で叫ばれても多分気付かないだろうところまで音量を上げて、ぐんと背伸びをする。 何だ、気持ち良いじゃん。 逆に、誰も正気を保っていないこの地球上で、優雅にクラシックを聴くのも、幻想的で結構悪くない。 このままふらりと、どこかへ行ってしまおうか。 気分良くそう思っていたために、その時起こったことが、すぐには理解出来なかった。 背後から強い衝撃を受けたかと思えば、膝がかくんと折れ、そのまま地面に転んだ。 その拍子に、耳からイヤホンが取れる。 両手を付いたので顔からダイブすることはなかったが、自発的に転んでいないことは明白だったため、私は慌てて体を反転させて仰向けになった。 目の前に、男が立っていた。 こいつが私の背中を押したのだ。 転ばされる程度ならまだ、良かったと思う。 しかし今の世間は、もっと無情だった。 男はズボンのベルトをカチャカチャと外し、鼻息を荒くした。 「こ、殺さねえから、い、いいだろ、な?」 そうか。 こういう人間も、いるんだな。 私は溜め息を吐き、青空を仰いだ。
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