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そんな不思議な出来事から5年後、私は生きていた。
病院に通っていたおかげで、病気がすぐに見つかったためである。
さらに、二歳年上の彼氏と式を挙げる約束までした。
友達と京都に旅行にも行った。
お母さんとお父さんに精一杯の親孝行をした。
恋人だった人は旦那さんとなり、二人の子供も授かった。
私の人生は十分すぎるほど、充実していた。
私は伝えたい。20歳で死んでしまった私に、私は元気だと。
あなたがやり残した事をできたと思うと。
あの時、教えてくれてありがとうと。
そして……私は寿命で死んでしまうようですと。
死ぬ前、私は病院で寝ていた。
声も、思うようにでない。
周りで娘や息子が座ってじっと私を見ていた。
「み、き」
「なに、お母さん」
「メール、うっ、て」
私は無理やり自分の声を出した。
きっと、20歳の私もこんなように最後の力を振り絞ってメールを打ってもらったのだろうか。
メールを打ち終わる頃には、もう力があまり残されていなかった。
「お母さん、これ誰に送るの?」
娘がそう聞いてきたけれど、もう声を出せそうにない。
誰でもいい、そのメールを、15歳の私に送ってほしい。
そして、私ともう一人の私の想いを届けてほしい。
そんな事を願いながら、そっと目を閉じた。
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