東郷奉文(ともゆき)は現実を知った

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 20XX年、日本政府は再び徴兵令制度を発布した。これにより一般人も戦争に参加することを義務付けられたのだ。  一般庶民の大体の人間が嫌がるであろうこの法令だが俺東郷奉文(とうごうともゆき)はうきうきしていた。  ようやく戦争に行ける。俺は戦争ゲームが大好きで「戦争」に憧れていたのだ。  そして数日後、俺の元に赤紙が来た。場所は中東の紛争地帯であった。これに奉文は最初大いに喜んだのであった。  ★  しかし、俺を待っていたのはゲームのような楽しさではなかった。それも当然だろう。戦争というのはいわば殺人だ。無双ゲームなどでNPCを殺すのとはわけが違うのだ。現実の戦争で殺すことを楽しみとしている人間がいたら間違いなく精神病にかかっているだろう。  実際そういうたぐいの人間は俺の近くにいた。 「わはははははっーーー」  何がそんなに面白いのか、もしくは何が楽しいのか高らかと戦場で大声を上げながら適当に銃弾を放つ兵士が俺の近くにいる。明らかに精神が錯乱していた。  彼の隣で戦っていた仲間が敵の銃弾にあたり死んだ。その光景に俺は恐怖した。  数多くの仲間が敵の銃弾にあたり戦死した。  これが戦争。俺は自分がどれだけ愚かなものに憧れていたかを思い知らされた。  ゲームと現実は違うのだと今さらながらに気づく。  ババババッッッー。  銃弾が雨あられ。その流れ弾が俺の頬をかすった。
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