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「結婚して!」五年ぶりに聞いた電話口の親友の声はどこかぎこちなかった。
僕が言葉を失って少し黙ってしまうと彼女は、
「えへへ、突然じゃ無理だよね。ごめん、忘れて・・・じゃあ」その言葉が続く前に僕は言った。
「いや!…かまわない。いいよ。結婚しよう」
「えっ?」電話を切ろうとしていた彼女は驚いてそう聞き返してきた。
「結婚、するんでしょ?いいじゃないか。お互いいい年なんだ。それに僕は海咲ほど仲良くなれる女の子を他に知らないからね。願ったりかなったりだよ。いいね、結婚。新婚旅行はどこに行こうか?子供は何人?」
「えっ、えっ…?」彼女のぎこちない愛想笑いが目に浮かんだ。僕はこんな性格じゃないけど、でもいいんだ。ここが踏ん張りどころなのだと自分に言い聞かせた。
昔、僕に電話をかけて死んでいった子達を思い出す。あの時僕は救いの手を出せなかった。今度こそはつかまなきゃならない。何が何でもだ。
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