終点 線路はどこまでも

27/28
前へ
/274ページ
次へ
さっぱり状況が飲み込めず、戸惑うスロロコに武政さんが飛行帽を手渡す。 「君たちの計画では、ハネムーンは後日ということになっていたが……」 ちらりと会場に目をやる武政さん。 その視線の先では、リトルミック前国鉄総裁とエンドウ管区長がにこにこしながら2人を見ていた。 「『任せてると、どうせいつまでも行かないだろうから』ということで、あの2人と私からのサプライズだ」 完全に思考を読まれていたか──と苦笑しききりのスロとロコ。 結婚式だけでも、とても身の丈に合わないような規模になってしまったのに、新婚旅行なぞとてもとても……と、適当なことを言って先延ばしを繰り返すつもりだったのだ。 それにスロロコの二人は、普通の夫婦に比べれば長い時間をともに過ごしてきている。 先延ばしを考えたのは遠慮ばかりが理由ではなく、今更二人っきりで旅行といっても……という思いもあったのだ。
/274ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加