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「ねえ、なんで? どうしてここに魔族がいるの? 不臭の匂い……こいつらかよ」
勇者の瞳が鋭くなった。視線は周りを排除し、許されざるモノだけを注視する。
子飼いの男達は勇者の豹変した表情に気付かない。
「あァ、魔族? 変なこと言ってねえでとっとと入れや」
勇者はそこで子飼いの言動に違和感を覚える。幾らなんでも呑気すぎる。
魔族とは人族がもっとも忌み嫌う生物だ。
檻に囲まれ、他の子供と同じく脅える魔族は人族と変わらない容姿であったが、その魔力は隠すことができていない。
いくら子飼いがポンコツでも、魔族は人族にとって恐怖の象徴。気付かないなんて、そんなことはあり得ない。
魔族が人族のように恐怖する姿は滑稽だったのだが――。
「おい、ガキ。入れって言ってんだろうが」
背中を押されて魔族を凝視していた視線は外れる。檻に入れられる勇者から纏う歪なものが薄れた。
奴隷となった少年少女が入れられたのは檻。ここに居るのは全員が商品。
勇者もそれに加わった。
檻へ入れられた勇者は、向かい側にある檻に視線を送る。
監禁されている魔族。
少しの音で体を縮こませ、仲間同士で集まり身を守る。
このような場に閉じ込められて萎縮している姿。
その動き、仕草がまるで人のようだ。勇者はそう思った。
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