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「なんで、なんで人族はこんな化け物を召喚したんだッ。こやつのせいで世界が滅ぶぞ……!」
「世界が滅ぶ? 滅ぶのはあんたらよ」
勇者が駆ける。互いに開いていた距離が二歩で詰まされ、魔王ですら目が追いつかない速度で勇者は迫った。
「――滅亡などあってはならぬ。貴様は存在していいものではないのだ!」
魔王は最後の悪足掻きと知りつつ、体内に残った微々たる魔力を魔法に注ぎ込む。
掌を勇者へ向け、放出――。
勇者は強化された動体視力をもって、魔王が何をするか分かっていた。
この距離は勇者の専売特許。魔法に頼る魔王ではなすすべがない。
一閃して魔王の腕を切り落とす。魔王は遂に両腕を失った。
「人のことをそんなふうに言うのね。あなた、神になったつもり? 所詮、魔王でしかないのに」
勇者は抵抗が虚しく終わった魔王へ、白刃の剣を突き刺す。聖剣は魔王の心臓を貫いた。
「――ァァァァ!」
魔王の叫び声に勇者は嗤う。口角をつり上げて、何度も何度も剣を突き刺した。
血飛沫が舞い、玉座を紅に染める。
そのたびに、魔方陣が紐解かれていく――。
「アハ、アハハハハハ! ねえ、もっと聴かせてよ! そのクソみたいな叫び声っ! あなたのソレ、とっても見苦しくて素敵だわ! 大丈夫、他の魔族もみんな殺してあげるから、お仲間さんも地獄に送ってあげるから!」
頬を赤く、高揚した勇者。その笑い声を最後に、魔王は世界から消えた。
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