第1章

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ここの竹の精霊 だから動けない。だから67年分の記憶しかない。だから人には見えない。だから外傷がない。だから純粋すぎる。 考えれば考えるほど、答えは確かになっていく。状況証拠ばかりだが 「……そんな気はしてました」 今、その答えは確証に変わる。 「たまに来る人を今年になるまでずっと竹の中の視点で見て、思ってたんです、記憶をなくしたとしてもどこかおかしいな、って。やっぱりそうなんですね。つまりさっきの質問の意味は」 「うん、竹は花が咲いたら枯れるんだ」 「そうでしたか。フフッ、自分の死期を待ち望んでいたというのは滑稽ですね。……ありがとうございます」 彼女はペコリと頭を下げる。 精霊と確信したからか、その所作は先ほどのような子供らしいものではなくどこか恭しいものになっていた。 「……やめてよ。親友の頼みなら叶えたいもんだよ」 「でも、私が負うべき悩みまで背負わせてしまいました」 「いいっていいって、それも親友の仕事!悩みも喜びも半分こするんだよ。だから気にしないで」 そう言って私が彼女の手をギュッと握ると彼女は少し驚いて、そして目がほのかに煌めいて、 「花、咲くといいですね」 「きっと綺麗な花だろうね」 そんなことを、呟いた。
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