第1章

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翌日、私は市立図書館にいた。ここの周辺の事件を一応調べようと思ったからだ。 もちろん見つかるわけない。まぁ予想はしてたよ。着物の幽霊なんて昭和以前のレベルだろうし、人がいなくなる度に記事になってたらきりがないからね。 けど、ここの地理なんかはわかった。あそこの竹は孟宗竹らしい。どうでもいいけど。 「ってわけでまったくヒントはなかったよ」 「孟宗竹……、知りませんでした……」 私が調査結果を報告してハァ、とため息を吐いても彼女は何のその。どこか時間がずれてるような気もする。 「花開くこともあるのでしょうか?」 「あるにはあるけど67年周期らしいよ。私がおばあちゃんになるときに一回あるかどうかだね。咲いたら枯れるらしいし」 「……見てみたいものですね。どんな花が咲くのでしょう?」 「見たことないの?」 「えぇ、記憶する限りただの一度も」 ということは案外最近の人なのかもしれない。ちょっと最後に咲いた年を帰ったら調べてみよう。 「それにしても楽しいですね。人とお話しするのはたぶん初めてです」 「えっ?ないの?」 「皆さん、聞こえないので」
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