第1章

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「見てくださいこの蕾!今年花が咲くんですかね!?」 「らしいよ。もう何日かだろうね」 翌日、私はあの場所にいた。 結論は、まだ出ていない。 「どんな花が咲くんでしょうね……?」 「白い花らしいよ。パーッて一気に咲くみたい」 「うわー、見てみたいですね!楽しみだなぁ」 「……そうだね」 思わず口ごもる。子の手術を誤魔化す親の気分だ。 「……らしくないです。貴女はいつもバッサリ切り捨てるのに今日はやたら日本人然としてます」 「そりゃ日本人だし。私にだって調子がでない日もあるから」 「悩み事なら聞きますよ?親友ですから!アドバイスできるかはわかりませんが!」 ズクリ、と胸に何かが刺さったような痛みが走る。それを悟られたくなくて、「胸はって言うことじゃないよ……」と皮肉をこぼした。 だが彼女は顔いっぱいに純粋すぎる心配を浮かべて私を見る。 決心が、揺らぐ。 「じゃあひとつだけいいかな。……友達の死ぬ日が見えて、それが近づいていたら貴女ならどうする?」
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