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「………でな、籍は入れるが、今の名前の方が仕事をしやすいから夫婦別姓で……って、瑞樹。聞いてるか?」
「ーーーっ、き、聞いてるよ。」
父さんに話しかけられて、我に返る。
危ない。今、食事中だった。
さっきから、気が付くとボーッと魂が抜けたようになってしまう。
まるで、現実逃避しているように。
だって、有り得ないんだ。この状況が。
白井くんが、僕の目の前で食事してるなんて。
……………白井くんが、僕と、兄弟になる、なんて………。
「へぇ、瑞樹と弘明くんは同じ委員会だったのか。」
「そうなんです。だから、学年が違っても知っていて。先輩には、いつもお世話になってるんですよ。」
「………僕、そんな、お世話なんて、」
父さんと白井くんの会話にも、しどろもどろでしか対応出来ない。
だって、どっちかというと、お世話になっているのは僕の方だ。
今日だって、アンケート………。
今日……………。
ああ、また、思いだした。
なんて、僕は馬鹿なんだろう。
思いだしてばっかで勝手に落ち込んで。
白井くんは、何事も無かったかのように接してくれてるのに。
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