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「どうしたの?父さん。」
話があると言われ、ダイニングテーブルの椅子に父さんに向かって座ったけど。
「………………………。」
言いにくいような、恥ずかしがっているような。もう、40歳をとうに過ぎている大人がモジモジしている姿って、正直、気持ち悪い………。
「とうさん。今日、早く帰ってきた事と関係があるの………?」
「ーーーそっ、そうなんだよ!実は、お前に会って欲しい人がいてだなっ!そ、それで………っ!」
まるで、僕がそう言い出すのを待っていたかのように、父さんは顔をパァっと輝かせて一気に話だした。
「………父さん、落ち着いて。ほら、お茶。」
「あ、ありがとう…………。はぁ、。」
僕が勧めたお茶を一口飲んだ父さんは、本当に落ち着いたようだ。
「会って欲しいって………、再婚とか考えてるって事?」
「す、鋭いな。お前…………。」
「流石、俺の子」と呟きながらウンウンと頷く父さんを遠い目で眺め、僕は今、言われた事を考えていた。
父さんが、再婚。
そうか。再婚したいって思える人と出逢えたんだ。
10年前に、母さんが父さんじゃない他の人を好きになって駆け落ちするように出ていって。
それから、父さんは母さんを忘れるかのように仕事にのめり込んで。
そばで見ていた僕は、そんな父さんに負担にならないように。家の事とか自分のことは全部、自分で出来るように頑張った。
だって、父さんが独りで泣いてる事を知っていたから。
だけど。
再婚。再婚か。
よかった。父さん、また人を愛することが出来たんだね。
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