枕元

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枕元

 友達に、いつでも睡眠不足だと言ってる奴がいる。  睡眠時間はおよそ七時間。決して短い訳じゃない。ただ、本人が言うには眠りが浅い性質らしくて、眠っても眠っても足りない感じがするらしい。  体質じゃ仕方ないよなと、聞いたみんなでそう結論を出した。  そんなある日、そいつや俺を含めた数人で、別の友達の家に泊まることになった。  小学生とはいえ、夏場だし男ばかりだから、特に布団とかはなくても風邪の心配はないだろうということになり、クーラーを効かせすぎない部屋で、遅くまでゲームなどをして遊んでいた。  ちなみに俺は結構早い段階で眠気に飲まれ、多分、一番最初に寝落ちたと思う。そのせいか、みんなが寝静まった頃に目が覚めた。 「!!!!」  勝手の判らない人様の家ということで、部屋は真っ暗にはされておらず、豆球が灯されていた。その薄暗がりの中でもはっりと見えた人影。  眠りが浅いとぼやいている友達の枕元に女の子が座っていた。  髪で覆われていて目鼻は見えない。ただ、唯一見えている口元がずっと動いている。  起きて  声が聞こえた訳じゃない。口の動きでそう言っているのだと判った。  ずっとずっと、女の子は友達に向かってその一言を繰り返す。その異様な光景にいつしか俺の意識は薄れ、気づいた時はもう朝だった。  昨夜見たもののことを言うべきか言わずにおくべきか迷ったが、もしあの女の子の『起きて』という言葉が睡眠不足の原因ならば、やはり話ておくべきだろう。そう思い、俺はその場で昨夜のことを語った。  話し終えた後、自然と全員で睡眠不足の友達を見つめていた。俺が話した女の子に着いて、何か思い当たることはないかと尋ねてみるが、まったく心当たりがないという。  それでも、俺の話を信じてくれて、帰ったら両親にこのことを伝えてみると言ってくれた。  そして翌日。  登校して来たそいつは、意外な話を語ってくれた。
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