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「ユーリ、社会のノート貸して」 俺は定期テストが楽しみ。 仲沢悠里と会話が出来るから。 「いいよ、瀬名君」 ユーリは二つに結んだ長い黒髪をゆらしてカバンからノートを出し、ニコッと笑って俺に差し出す。 ちいこい体に似合わず手はでかい、かな? ノートとユーリの手の大きさを脳裏に焼き付ける。後で俺の手と比べよう。 そんなこと考えながら俺の手がユーリのノートを掴む。一瞬ノート越しにユーリと繋がる。 あー、鼻血でそう。ノートになりてえ。 「ありがとな、ユーリ」 よしっ、二回も名前で呼んだ。 しかも目も合ったぞ。 あー、サイコー。 「ユーリあのさぁ……」 勇気を振り絞って言い出した途端、山本英美がこちらに近づくのが見えた。 「何?」 ってユーリは聞いてくれたけど、 「あっ、毎回ありがとな」 俺は、そう言うと慌てて自分の席に戻った。
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