ルセテの目的

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―― 1 ―― 「早くしろよっ、ノロマッ!! ったく使えねー"女"だ。」 ばちんと強く左頬を叩かれ、勢いで右側頭部に装着していた携帯型探索機器が弾け飛んだ。 「申し訳ありません。ハワード隊長。」 左頬がじんじんと痛み熱を帯びていく。舌で唇を舐めると鉄の味がした。それでも私は表情を変えることは無かった。 「大丈夫か?」と声を掛けてきた朝霧が落ちた携帯型探索機器を拾い上げ私に渡してくれた。 「ありがとう。朝霧さん達は隊員達を引き連れて屯所で休んでいてください。」 私は外れた装備を装着しながら、小走りでハワード隊長を追う。そして数歩後を歩き目的である会議室に到着した。 「沿岸警備隊ハワードだ。」 そう言って中へ入った隊長に続き私も会議室へと入る。 正面には国王警備隊の獄炎隊長とオルカ副隊長が着席しており、その隣には山間警備隊のトーマス隊長と大地の翼副隊長が並んでいた。 そして、私の目の前では青い髪の女性がテーブルに突っ伏して寝ていた。 「凛子さん、起きてください。」と、私が何度か体を揺さぶると、凛子さんは首をもたげ両腕を伸ばした。 欠伸をしながら喋っているので何を言っているのかよく分からないが、理解しようとしていると背後から直樹さんが声を掛けてきた。 「ルセテちゃん、久しぶり。今回は大変だったみたいだな。」 私は苦笑いを浮かべ挨拶もそこそこに、ハワード隊長の元へいき、沿岸警備隊副隊長と書かれた名札の前に座った。 蓮さんが龍王の洞窟へと行ったあの日から一年が経った今、私は沿岸警備隊の副隊長にまで上り詰めていた。 覚醒した職業、魔剣士は★7まで上がっている。さらに、敵国の師団長から頂いた金の短剣は歴史的価値の高い品物だったらしく、ネットを介してレア装備と交換することができた。 そして、暇を見つけては凛子さんに訓練をつけてもらい一人前の剣士になることができたんだ。 蓮さんには遠く及ばないけれど、私は確実に強くなっていた。
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